えび茶ゾーン

2014年4月7日

第910回

 先日演習の最終プレゼンで、あるグループがブラジルに日本のおもてなしを伝えるという企画を発表した。ワールドカップやオリンピックを機に、鉄道のインフラ整備が遅れているブラジルに、高速鉄道と共に清掃サービスも輸出し、日本のおもてなしの文化を伝えるというものだった。

 確かに、日本の清掃サービスは目を見張るものがある。迅速かつ丁寧で無駄のない動きは、他国に類を見ないであろう。イギリスの知人などは一列に並んで頭を下げて列車を見送るその姿に、ロイヤルファミリーになったようだと感動していた。

 しかしである。清掃をする人の気持ちはどうなのであろうか?前任校で、毎朝研究室を清掃してくれたのは年配の方だった。3人一組で5分以内に清掃し、終わるやいなやモバイル端末で報告しなければならない。あまりの手際の良さに感心して声を掛けると、モバイルが鳴り出し本社から催促の連絡が。さて、ブラジルの人たちがこのような働き方を好むだろうか?

 おもてなしの心。心から相手のことを慮(おもんぱか)ってこそ、美徳なのだと思う。デジタル機器で管理され、マニュアルに従う姿には、物悲しささえ感じられる。同じ声の出し方、話し方をする女性店員を見て、アメリカの知人は人形のようで哀れだと言った。2020年の東京オリンピックでは、滅私奉公やジョージ・オーウェルの『1984』に描かれた監視社会でも、分厚いマニュアルでもなく、心の声に従って自然な笑顔と共に「おもてなしの心」で世界の人たちを迎えてほしいと思う。(TT)