えび茶ゾーン

2014年4月21日

第912回

 最近、早稲田大学出身の理系の若手研究者に関する記事がマスコミをにぎわせている。私は、関係者ではなく、関連の報道を丹念にフォローしているわけでもないが、研究・教育に従事する者としていろいろ考えさせられた。この場を借りて3点ほど雑感
を。

 研究論文では、ミスが防御力を削ぎ、攻撃力の精彩を鈍らせることもある。学界、ひいては社会に対して影響力の強いアイデアであればあるほど、論文にする際には、十分な精査を要しよう。


 ただ、萌芽的研究には、不確実さがつきものであるし、研究手法の未熟な駆け出しの時期の素朴なひらめきが、後の大きな研究成果につながることもある。このような不確実さや未熟さは一切許されないものであろうか。この点、アイデアの斬新さ尊重に傾く米国と、論証の手堅さ尊重に傾く職人気質のわが国では、態度が異なるようである。

 最近はIT技術の進化が目まぐるしい。私が大学院生のころは、インターネット上にクオリティーの高いテキスト情報が豊富に提供
されているという時代ではなく、その切り貼りで学術論文レベルの文章を構成するということは考えにくかった。現在では、やろうと思えば誰でもできるようになっていて、学生諸君は学部時代から、それを前提とした倫理教育を受けるようになっている。そのはざまの世代に事故が多いようである。研究では最先端の事象に触れることが通常である。なればこそ、研究倫理には、過去の事例から作られたマニュアルの順守という態度ではなく、モラルの確立が求められていよう。(N.A.)