えび茶ゾーン

2014年5月26日

第915回

 1964年に海外渡航が自由化されてから今年は50周年に当たる。もっとも「夢の」ハワイ旅行を賞品としていたクイズ番組もあった時代で、私にはまさに夢の話であった。

 夢がかなったのは自由化25周年の年、1989年だ。夏休みを利用して、ヨーロッパ某国で語学を学ぶためであった。格安航空券が出回り始め、海外への卒業旅行も人気になっていたが、貧乏大学院生にはまだまだ不自由な時代であった。旅券取得に、今では不要な預金残高の証明が求められたからだ。とりあえず旅行費用一切を入金して証明したが、旅券取得とともに残高はほぼゼロに戻った。

 初海外はドキドキで、当初はおっかなびっくり街を歩いたが、最後の2週間は3カ国をワクワクしながら周遊した。金はなかったが時間はあった。目的地に着いてから飛び込みでホテルを探したことを懐かしく思い出す。良い部屋を安く取れたときはうれしかったが、どこも満室で夜行列車で移動したり、駅のベンチで一晩過ごしたこともあった。

 翌年から1年半ほど留学をした。本格的な留学生活で学ぶことも多かったが、最初の海外経験の方がはるかに楽しかった。専門の勉強をしなかったこともあるが、何より見聞するもの全てが新鮮だった。

 今は自由に海外に行けるが、旅程は窮屈だ。ホテルは予約して行く。駅のベンチで寝ることもない(そもそも危険だからやってはいけない)が、ドキドキ、ワクワクもない。

 海外未経験の学生もいるだろう。これからドキドキ、ワクワクが味わえるかと思うと、うらやましくてならない。(痴迷)