えび茶ゾーン

2014年6月16日

第918回

 学生サークル募集看板に書いてある「学生諸君、あなたの可能性は無限である」というメッセージは、西門に向かって登校する私に勇気を与えてくれる。人間一人一人は潜在能力があり、無限大の可能性を持っている。大学で学ぶということは、閉じ込められた潜在能力が解放されて輝くことである。それを引き出すには現実と離れて夢想の世界に飛ぶ。

 フランスの著名な哲学者ガストン・バシュラール著『夢想の詩学』によると、夜の蝋燭(ろうそく)は夢想を引き起こす。夢想は過去の追憶を呼び起こす。そして、夢想した人は想像力と記憶力が一致する世界に至る。自分の過去と未来に思いを馳(は)せる。

 蝋燭の青白い光は、人間世界の不条理を表現する。芯の先で燃えている炎の紅い色は、全ての汚れの象徴である。青白い光の上昇と紅い炎の降下の戦いでもある。すなわち、ある価値ともうひとつの価値との決闘である。蝋燭を取り巻く静けさは炎を昇華して、深い夢想へとつながる。蝋燭は人間の内面的思索を促す。

 蝋燭はひとりきりで燃える。一人で夢を見るのと、蝋燭が燃えるのは同じ世界である。一人で夢を見ることは人間の本質である。絶望と諦めをのみ込む孤独は蝋燭のイメージでもある。大学時代は奇跡の機会、思索とともに夢想する。

 朝8時の登校はとても爽やかである。外の社会では強風が吹いていても、キャンパスの朝の空気は実に清らかで、木は光に照らされて明るい。大学4年間の時間がいかに高貴で、いかに貴重か感じてほしい。(MR)