えび茶ゾーン

2015年4月20日

第937回

 

 大学は、出会いと別れの場である。毎年毎年、日本全国、いや世界各国から学生たち、研究者たちが集まり、また去っていく。とりわけ本学では、実に多種多様な人たちがこの地で人生の一時期を過ごし、「早稲田らしさ」をも形作っていると感じる。

 

 私自身、本学に入学してから人生を変える大きな出会いが幾つもあった。もちろん妻との出会いもそうなのだが、恩師との出会いも人生の転機となった。私の専門分野については入学当初から関心を持ち、自分なりに勉強を始めていた。3年生からのゼミ登録に際して学部事務所からもらった冊子を見たところ、多々ある同分野のゼミの中でも一つだけ異色のゼミがあったので目に留まった。「戦後最大の歴史的事件(悲劇または喜劇として)はソ連邦の崩壊であると受け止めている諸君に期待する」といった、その専門分野とは全く関係ないように思える一文が書かれているのもとても気になった。いざ、そのゼミに入ってみると、実に高度な内容でこれまでの勉強量では全然歯が立たなかった。ただ、恩師の持たれている問題意識の深さ、視野の広さ、そして人となりに一気に引き込まれ、ますます大学での勉強にのめり込んでいったのを覚えている。

 

 その恩師も昨年秋に亡くなられた。かつてご退職のとき、学問的探究の灯を絶やさぬよう「自灯明、法灯明」といったブッダの言葉を教え子たちに残されていた。「集り散じて人は変れど、仰ぐは同じき理想の光」。校歌の一節を思い浮かべながら、今また春を迎えている。(T.K.)