えび茶ゾーン

2015年10月5日

第950回

 

 昨今日本では「役に立たない」と見なされる非実学への風当たりが強い。現政権も国立大に「社会的要請の低い学部」の転換を求める、通称「文系廃止令」を出した。学生の皆さんも「これを学んで何の役に立つのだろう」とか「大学の授業よりアルバイトの方が人生経験になる」などと思うことがあるかもしれない。

 

 しかし「役に立つ」ことの定義は存外難しい。例えばいつ役立つのか。実学の典型とされる電子工学において今すぐ有用な知識の多くは、10年後には古くて無用なものとなろう。他方、使い道が一見不明な基礎数学は、実はさまざまな領域で、時代を超えて利用され続けている。「無用の用」という言葉があるように、用・不用の評価はなかなか容易ではない。

 

 また現代社会の諸問題の多くは、社会の仕組みや人類の歴史などのようなさまざまな非実学的な知識がなければ、解決どころか、その理解すら不可能である。例えば1,000兆円に膨らんだ日本の財政赤字が、実学による発明とその利益だけで清算可能と考えるのはあまりに楽天的だ。財政赤字が続く理由の解明、さらに財政赤字の何が問題で、実は何が問題ではないかを理解するためには非実学的知恵が必須である。

 

 一方独裁的な権力者は、歴史的にみて非実学を軽視する傾向がある。ナチス・ドイツ、旧ソ連、大日本帝国末期など、その実例は少なくない。憲法学者の大多数が「違憲」とみなす安保法制を強行採決した安倍政権が、文系廃止令を出したことは示唆的である。だからこそ皆さん自身で、現代日において学ぶことの要・不要を考えてもらいたい。(ST)