えび茶ゾーン

2015年11月2日


   昭和の時代、旅行費用は極めて高額だった。特に、海外旅行は同級生の中でも経済的に恵まれた学生だけの特権だった。結局、多くの学生は半ば諦めて海外に出ることなく働き始めた。ある学生は奨学金をもらって留学を果たすことで海外へ出ようとし、またある学生はアルバイトでお金をため、インターネットもない時代にホテルへ手紙を書いて予約をとりつけて旅立った。ネットで気軽に海外航空券やホテルを予約でき、海外に行ける今の時代からは、想像もできないような状況だった。
 

 そんな時代、働き始めたら行けないだろうと考え、4年生で意を決し初めての旅先に選んだのはオーストラリアだった。全てを包含するような広大な大地と毅然(きぜん)とした自然のありさまに、人生観を変えるほどのインパクトを受けた。夜、月明かりが桟橋の先の南極へと続く海を照らす光景は、言葉にできないほどの美しさで、生涯にわたり忘れられないものとなった。
 

 旅をしてほしい。授業、サークル、バイトが忙しくて行けない、お金が掛かるから行けない、と言っていると、おそらく一生行けない。年を取れば取るほど仕事も家庭も忙しくなり、社会的責任は重くのしかかる。「今でしょ!」という言葉が流行(はや)ったが、学生時代の今こそ、旅に出よう。日常と違う空間に身を置いて過ごすだけで、降り注ぐような発見と感動、癒やしがある。卒業研究に行き詰まりを感じた時、就職への不安で押しつぶされそうな時、人間関係に疲れた時こそ、学外に出よう。これまでの自分を振り返り、未来を考える時間と空間を得るために。(H)