えび茶ゾーン

2015年11月16日

第955回 

 

 研究室の飲み会の席で「2045年問題」が話題になった。ご存じの方もいるかもしれない。コンピューターの性能の進歩はその心臓部である中央演算処理装置(CPU)に載せられるトランジスタの数に比例する。1965年ゴードン・ムーアは1.5年で組み込めるトランジスタの数が2倍になると予測した(ムーアの法則)。そして1970年代以降、ムーアの法則は的中し、5年で10倍、10年で100倍、20年で1万倍と指数関数的にトランジスタ数は増加し続けた。

 

 人間の大脳皮質の神経細胞は数百億個だから、CPU上のトランジスタ数は近い将来に確実に脳の神経細胞数を超えることになる。冒頭の「2045年」は人間の知能を超える人工知能(AI)の誕生が予想される年である。このようなAI進化が人間の脳の機能を凌駕するポイントは技術的特異点(シンギュラリティ)と呼ばれ、いったんこの特異点を超えたAI が現れれば、そのAIがさらに高性能のAIを設計することになり、その後は爆発的なAIの自己進化が起こると考えられる。

 

 猛烈なスピードで自己進化を繰り返すAIが生み出す未来世界は、人類の知能ではもはや予測不可能であり、科学、技術、文化、農業、芸術などあらゆる分野が現在の姿から劇的に変化するだろう。人類が数千年かけてゆっくりと手に入れてきた英知の蓄積は、特異点以降はその質・量共に想像できないレベルに飛躍することになる。夢のように聞こえるが、30年後の予測世界である。諸君の目指す職業や学問の価値はそのときにまだ残っているのか?(SS)