特集

2016年1月11日

  • ▲政治経済学術院教授 田中 愛治

  • ▲My Policy Lab代表 伊東 理奈 大学卒業後、外資系PR会社に勤める傍ら、「My Policy Lab」を設立。自分なりの政治参加のスタイルを考えるイベントを定期的に開催。参加者の中から食料廃棄問題に取り組む学生団体が立ち上がるなど、政治参加の若者の輪が広がっている。

  • ▲左から、国際大学GLOCOM客員研究員の境真良さん、株式会社Wondershake代表の鈴木仁士さん、株式会社エニグモ代表の須田将啓さん

  • ▲政治経済学部4年 中川 健吾 NPO法人ドットジェイピーの運営する議員インターンシップに参加。終了後、同法人の関東第二支部代表に就任。2014年杉並区長選挙に先立ち企画された「杉並区長ネット模擬選挙」に当選。実際の区長選候補者と公開討論会で肩を並べた。

  • ▲投票所の中

2016年の注目
夏の参院選から18歳選挙権が適用されます
選挙から始まる私たちの政治

 

1945年に「年齢満25年以上」から現行の「満20年以上」に引き下げられて以来、70年ぶりの選挙権改革が本格始動する今年。
「18歳選挙権」が形だけにならないよう、一人一人が自分の意志で行動することが大切です。
「若者の政治参加と選挙権年齢」について、教員・校友・学生それぞれの立場や視点から意見を伺います。


投票年齢引き下げの意味
~主権者としての心構えとは?~


政治経済学術院教授 田中 愛治(たなか あいじ)

1975年早稲田大学政治経済学部卒業後、1985年オハイオ州立大学政治学部博士課程修了。青山学院大学教授などを経て、現職。2014年世界政治学会(IPSA)会長に就任

 

若者の声を政治に反映する

 

 そもそも投票年齢引き下げの法改正の趣旨はどこにあったのでしょうか。近年、投票率は年齢が高い方が高く、若い世代ほど低い傾向にあります。まして少子高齢化が進む中、票を得るために政党や政治家が公約に掲げる内容は、年金や介護など高齢者向けに偏りがちになります。若者の声が政治に反映されにくくなっている現状を改善するために、今回の法改正に至ったのです。

 

 一方、18・19歳の新たな有権者が約240万人増えることで、全体の投票率は下がるというのが大方の見方です。総務省発表の直近の国政選挙の年代別投票率も20 ~24歳が29.72%で最も低く、10代はさらに低くなると予想されるからです。それでも、多くの先進国と同様に投票年齢を18歳に引き下げ、少しでも世代間格差を埋めることに重きが置かれたといえます。


高校生の政治活動も認める方向に

 

 投票年齢の引き下げに伴ってもう一つ話題になっているのが、1969年の「文部省初等中等教育局長通知」の廃止です。当時は学生紛争が激しく、高校生が政治的な活動に関わることは望ましくないとして活動を制限、禁止することが求められました。すると、政治や経済を扱う教師が萎縮。それらの科目は暗記中心の学習になり、非常に無味乾燥なものになりました。授業がつまらないから生徒は政治に関心がなくなり、その結果、若者の投票率が下がるという悪循環に陥ってしまったのです。文部科学省はこの方針を見直した文書を取りまとめ、全国の教育委員会などに通知しました。それによると、高校生の政治活動について、一定条件の下で認める内容となっています。

 

 小・中・高を通じて政治や選挙に関する積極的な教育を受ける機会がないまま、大学に入学した学生も多いのではないでしょうか。今回の投票年齢の引き下げは、大学での政治教育の在り方も再考するきっかけを与えてくれています。法律や政治を専門とする学生以外にも、リベラル・アーツ教育の一環として政治の仕組みや本質を学ぶ機会を設けることが求められており、大学が担う責任は大きいでしょう。


選挙の仕組みを知って投票を

 

 メディアは時として、党派の争いがあたかも政治であるように報道します。しかし政治は、国や自治体の意思決定、政策や制度の決定に結び付いているもので、政治家だけで行うものではありません。国民の声を届ける最も公式の、制度化されたダイナミックな仕組みとして選挙があり、私たちは政治に参加し、主権者としてその意思を政治に反映させることのできる、平等な機会を与えられているのです。

 

 主体的に投票する人の多くは、自営業や経営者、役員、管理職などです。つまり、自前意識を持っている人ほど、政治は自分の仕事や身近な生活に直結するものだと感じています。雇用されている側では40 ~50代で管理職に就くまで、そのような感覚はなかなか持ちにくいものですが、若いうちから実感できるようになることが大切だと思います。

 

 皆さんも選挙を甘く見ず、じっくり考えて投票してほしいですね。投票することで意思表示をしておくと、後で何かあっても悔いが残りませんから。

 

 

同世代や先輩が動き始めています
自分なりの政治参加を考えよう!

 

困り事を政治を使って解決する

 

My Policy Lab代表
伊東 理奈(いとう りな)
(2010年社会科学部卒)

 

 私たちは、「音楽×政治」や「アイドル×政治」といったテーマで各業界のオピニオンリーダーが縦横無尽に語るトークショーや、参加者にゲーム形式で政治との関わりを体感してもらうワークショップを開催しています。トークショーは、株式会社エニグモ代表の須田将啓(すだ しょうけい)さんらをお招きしたベンチャーの回で参加者が100人を超えるなど、社会や未来についてこれまで数多くの意見が集まりました。政治イコール選挙ではありません。例えば、議員に陳情したり署名を集めたり、自分たちの声を政治に届け、動かす手段は選挙以外にもあるのです。実際に当イベントの開催に当たり、区役所宛てにメールで会場の相談をしたところ、返事を頂けた。これも政治の一つではないでしょうか。顔の見えないマスよりも、顔の見える一人の意見の方が重視される実感を皆さんにも持ってもらうのに、シミュレーションゲームは有効ですね。投票年齢の引き下げにより、大学入学が有権者としての自覚を持つ契機となります。政治を日常生活で活用することを考えてほしいと思います。

 

 

若者と政治の接点を考える

 

政治経済学部4年
中川 健吾(なかがわ けんご)

 

 私が政治に関心を持ったきっかけは、公民という一教科ではなく学校教育そのものでした。中学時代、つまらなかった勉強が、高校に入ると急に面白くなったんです。カリキュラムの差なのか教え方の差なのか、あれこれ思う中で、教育制度をつくる「政治」に行き着き、政治経済学部へ進学しました。そして、座学では飽き足らず、1 年次に「議員インターンシップ」に参加。終了後には、そのプログラムを運営するNPO法人ドットジェイピーの一員として、学生と議員の橋渡し役を務めました。活動を通じて感じたのは、若者が投票に行くメリットを感じていないこと。確かに私たちは意見しなくても、三食食べられるし、学校にも行ける。また、安全保障やインフレ率などの問題は自分事として捉えるには大き過ぎる問題かもしれません。けれど、アルバイト一つとっても法律で決められたルールがあり、地域のリーダーを決めるのも政治です。そうした自分と社会の共通点を見つけることが大切だと思います。何より見えているものしか見ないのはもったいないですよ。

 

 

18歳選挙権Q&A  監修:東京都選挙管理委員会

 

Q 住民票が実家のまま。現住所に移していないと投票できない?

 

A 選挙で投票するためには、選挙権を有しているだけでなく、選挙人名簿に登録されていることが必要です。選挙人名簿への登録は、住民票がある自治体で行われます。そのため、進学や就職などに伴い実家を離れるなど、住所を変更したときには届け出が必要です。原則として、同一市区町村内での引っ越しの場合は、当該市区町村の役場に転居届(住民異動届)を提出。他の市区町村へ引っ越す場合は、住所変更前の市区町村の役場に転出届を、変更後の市区町村の役場に転入届を提出する必要があります。

 

Q 17歳なのに投票できる!? 満年齢の考え方は?


A 結論からいえば、17歳最後の日が投票日であれば投票できます。選挙権の場合、満年齢は「日」を単位として考えます。つまり、満18歳に達する前日の午後12時を含む、前日丸一日が選挙権取得日となります。ただし、「満年齢は誕生日の前日に加算される」という考え方を拡張解釈しないこと。年齢の解釈はあくまで個々の法律の文脈によります。例えば、飲酒や喫煙は当然、20歳の誕生日を迎える当日午前0時まで禁止されています。「時刻」として考えるのか「日」として考えるのか注意が必要です。


Q 選挙の時期は試験やその準備で忙しいのですが…

 

A 投票日当日に用事がある場合、「期日前投票制度」を利用しましょう。選挙期日(投票日)の公(告)示日の翌日から前日までの間、各市区町村の役所・役場などに期日前投票所が設置されます。自分が選挙人名簿に登録されている市区町村の期日前投票所で、投票を済ませることができます。ちなみに公示と告示の違いはご存じですか?天皇が国事行為として行う衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙では「公示」が、選挙管理委員会が公職選挙法に基づき行う補欠選挙や地方選挙では「告示」が使われます。

 

Q 投票所の中はどうなっているの?


A 投票所入場券が手元に届かなかったり紛失しても、選挙人名簿に登録されていれば投票はできます。投票所の係員に申し出ましょう。