先輩に乾杯

2012年4月26日

  • ▲星隼人さん

  • ▲paperboy&co.2013年新卒説明会に宇宙服で登場した社長・佐藤健太郎さん。説明会はTwitterのトレンドワードに入るほどの話題に

  • ▲「弁当男子」としてさまざまなメディアから取材を受けた星さん

生かされてきた半生
数々の出会いが僕を成長させてくれた

株式会社paperboy&co. 社長室 室長
星  隼人さん


 渋谷のホールにてあるIT企業の会社説明会が行われた。まばゆい光とスモークから現れたのは、なんと宇宙服に身を包んだ社長だった。就活中の学生たちの心をわしづかみにしたこの演出を手がけたのは、今回登場していただく先輩、株式会社paperboy&co. 社長室室長の星隼人さんだ。ウェブデザイナーとしてキャリアを積み、「弁当男子」ブームの火付け役としても知られる星さんの、出会いにつむがれたユニークな経歴をたどった。

障がい者の方から教えてもらったこと
 ウェブデザイナーとしてpaperboy&co.に中途入社した星さん。十数年にわたりウェブ制作に携わってきたが、学生時代はサッカーに熱中し、ものを作ることとは無縁な生活を送っていたという。そんな星さんのクリエーターとしての出発は意外な出会いから始まった。

 高校生の時、登校時の電車が停車した駅で一人の身体障がい者が乗車してきた。足を大きく引きずりながら歩くその姿に、ざわつく周囲の人。星さんはその時の車内の雰囲気に疑問を抱く。「障がい者を見て動揺するのは、きっと障がい者のことを知らないからなんだ」、そう思った時、彼らのことをもっと知りたくなった。そして、早稲田大学へ入学すると同時に福祉活動を始めた。多くの障がい者とふれ合う中で、自分たちと何も変わらないことに気付かされる。教わることも多く、アルバイトで通っていた障がい者の関連団体では職員として働く障がい者の皆さんからパソコンの基礎を学んだ。「WordやExcel、ウェブサイトの作り方まで教えていただきました。覚えていくうちに楽しくなり、だんだんウェブ制作にのめり込んでいったんです」。

人を求めて…

 大学卒業を間近に控え、社会への船出を目前にした星さんの頭の中に「就職」という選択肢はなかった。「就職活動に躍起になる同級生をよそに僕は相変わらずフラフラしていました。僕にしかない素晴らしい人生が待っていると思いこんでいたんです。思春期の中学生みたいに(笑)」。ところが卒業後も、進むべき道が定まらない。周囲の人に自分だけの人生を歩むと息巻いたものの、就職した友達が食事をおごってくれた時はわびしい気持ちになった。徐々に危機感が募り始めた星さんは、アルバイトで得たウェブ制作の知識を活かし、公認会計士事務所の派遣社員となる。そこで自分の能力が社会に通用することを知り、一念発起の末、フリーランスのウェブデザイナーとして独立。「フリーって聞こえはいいですが、つらい毎日でした。実家で仕事をするのですが、一日の中で会う人は両親と飼い犬のコジローだけですよ(笑)。さびしくて頭がおかしくなりそうでした」。

 孤独に耐えかねていた星さんに、仕事の得意先であるシステム会社から「うちに来ないか?」と声がかかる。ようやく仲間ができると入社したものの、再び孤独を味わうことに…。「入社すると、同僚が次々と客先に出向するようになり、焦りました」。同僚はみんな気のいい人たちだった。しかし、気付けばまた社内で一人きり。そんな星さんを救ってくれたのはブログで築いた人とのつながりだった。「大好きだったpaperboy&co.が始めた新サービス『Color Me Shop! pro』(現:カラーミーショップ)に興奮して、自分のブログにその時の感動を書いたところ、『うちにくるしかないんじゃないんですかね』と、当時のpaperboy&co.社長からコメントをいただいたんです。お世話になっていた会社には申し訳なかったのですが、paperboy&co.に入りたいという気持ちを抑えられませんでした」。

paperboy&co.での刺激的な日々

 paperboy&co.に入社して7年。その間に会社はJASDAQ上場を果たし、事業規模を拡大していった。「年を追うごとに、どんどん社員が増え、引っ越しも何度したことか。会社が成長していくことを実感できる喜びはベンチャー企業ならではかもしれませんね。気の合う仲間もでき、飲みに行ったり、スポーツしたり、オン・オフの区別がない充実した日々を過ごしています」。paperboy&co.の僚友たちは誰もが新しいことを求めていた。星さんもまた、おもしろそうだと感じることを率先して実行した。そんな行動が思いもよらない展開を見せる。「料理が好きだった僕はよく、夕食の余りで翌日のお弁当を作っていたのですが、せっかくなのでその都度中身を撮影してブログにアップしていたんです。そうしたら、突然「弁当男子」ブームが到来! 何の気なしにお弁当を作っていただけなのに、テレビや雑誌の取材が押し寄せて「弁当男子」としてメディアに登場することに。人生ってホント、何が起こるか分からないからおもしろいですよね(笑)」。

就活も仕事も楽しもう!

 迷いと葛藤の中で、わき上がってくる感情と素直に向き合い続けてきた星さん。これまでの半生を振り返り、今思うこととは?「僕が求めてきたものって、“人”だったのだと思います。地位やお金や世間体なんて問題ではなかった。今まで出会ってきた人たちが、僕を成長させてくれたのだと感謝の気持ちでいっぱいです。生きてきたというより、生かされてきたんですよね」。

 最後に早稲田の後輩に向け、こんなエールを送ってくれた。「就職活動も仕事も、嫌々やるくらいならやらない方がいい。僕は就職活動を放棄してしまいましたが、今なら悩みながらも楽しく就職活動をする方法を考えると思います。それでも折り合いがつかないなら、本能に従い信じる道を突き進んでください。失敗したって死ぬことはないから大丈夫。自分自身としっかり向き合えば、おのずと答えは見えてくるはずです」。


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Profile

■ほし・はやと
1977年生まれ。2000年、早稲田大学社会科学部卒業。卒業後は在学中に始めた障がい者の関連団体でのアルバイトを継続。公認会計士事務所での派遣社員を経験した後、ウェブデザイナーとして独立。プログラミングに興味を持ちシステム会社に入社。2005年、ウェブデザイナーとして株式会社paperboy&co.に入社、レンタルサーバ「heteml(ヘテムル)」、ASPサービス「グループチューブ」の開発に携わる。現在、社長室室長として各種イベントや採用活動に従事している。

1273号 2012年4月26日掲載