ぴーぷる

2013年10月21日

  • ▲先進理工学部4年 後藤 駿介

  • ▲ゴールの福島県相馬市松川浦環境公園では相馬高等学校相馬 太鼓部の演奏に出迎えられ、地元の方の熱烈な歓迎を受けた

  • ▲山元町の渡辺イチゴ農園にて。70歳を過ぎてもバイタリティに溢れる、経営者の渡邉正俊さん

  • ▲福島県相馬郡新地町の仮設住宅を訪問

  • ▲岩手県洋野町宿戸漁港で出会った吹切功一さんは、アワビ採りの名人

第573回

700kmのロングトレイルで見つけた東北の魅力

先進理工学部4年 後藤 駿介
(ごとう しゅんすけ)



 現在、震災復興支援事業の一環として、東北の優れた自然景観や文化を堪能できる自然歩道『みちのく潮風トレイル』の開通準備が、環境省によって進められている。青森、岩手、宮城、福島の4 県にまたがる被災地沿岸のコース。その安全性や有効性を確かめるため、東京と東北を行き来し、延べ50日かけて約700kmを踏破した早大生がいる。

 「調査スタッフの話を聞いたのが3年生の秋。ちょうど自分の進路や将来について考え始めていた時期でしたが、僕の頭の中は、このとき一気に東北を歩くことでいっぱいになりました」。

 後藤さんが早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター (WAVOC)の震災ボランティアで宮城県気仙沼市を訪れてから、1年以上が経過していた。日を追うごとに被災地の報道が減っていく中、再び「自分の目で被災地を見る」必要があると感じたという。

 みちのく潮風トレイルの調査スタッフは、町歩きを通じて地域文化への接触や人的交流を図り、東北の魅力をネットで発信することが任務となる。出発日は2012年12月1日。事前に事務局から、地図やゼッケンなどが手渡されたが、一つの不安が頭をよぎる。

 「震災の悲しみが残る中、観光ムードで東北を訪れるのは、地元の人の感情を逆なでしてしまうのではないか…」。

 ボランティア活動時に見た惨状の「今」を簡単には想像できなかったのだ。だが、それは杞憂だった。後藤さんが歩いていると、地元の人が話しかけてくる。後藤さんからも町中の人に絶えず話かける。そこでドラマが生まれた。

 岩手県の久慈市で出会った漁師の方とはすぐに意気投合。彼は自宅に泊めてくれた上、「人生で道に迷ったらまたうちに来なさい」と言ってくれた。宮古市の道の駅で野宿をしていたとき、通りすがりの男性が弁当を差し入れしてくれたこともあった。「東北の人は、本当にあったかい」。後藤さんが見つけた東北の魅力の一つだ。

 もちろん明るい話ばかりではない。宮城県の石巻市では、津波で婚約者を亡くした男性の口から「いつ死んでも悲しくないっちゃ」 という言葉を聞いた。一方、山元町では津波で流されたイチゴハウスを再建し、「津波に負けずに頑張っている人間がいることを伝えてくれ!」と前を向き立ち上がる農家の方にも出会った。後藤さんはこうした東北の現状を日々発信し続けた。そして2013年3月16日。延べ50日間の調査の旅は、福島県の相馬市でゴールを迎えた。

 「全ての縁を一生大事にしたい」と当時を振り返る後藤さん。出発前感じた不安も今は前向きな感情に変わった。「ようやく多くの方が仕事を再開して、観光が東北の活性化につながる段階に入ったのだと実感しました。だからこそ、早稲田の明るい学生が東北の方とどんどん交流することで、東北の街はもっと元気になると思います」。

 交通手段は自分の足だけ。歩くことで出会える人、風景がある。今回、そのことを身を持って教えてくれた後藤さんはこう続けた。「このトレイルが、東京と東北の物理的な距離を超えた縁を紡ぐきっかけになってほしい」と。

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■ごとう・しゅんすけ 千葉県出身。東邦大学付属東邦高等学校卒業。 趣味はサッカー。夢は「寅さんのような人」になること。2013年春、 八戸~相馬間約700km踏破。 トレイルウォーク日記はこちら(http://www.tohoku-trail.go.jp/report /)。