えび茶ゾーン

2013年12月9日

第906回

 子どものころから怖がりで、高い所は大の苦手。怪談などもってのほか。しかし、あるときからこの臆病な性格も想像力が豊かだからこそ、と開き直ることにした。

 小学生のころはよく空想にふけった。国語の時間にトルストイの小説を読みながら大海原を航海し、蝉(せみ)の一生を知った時には数年間土に閉じ込められた気分を味わった。先日、授業で万里の長城の話題に触れた際、ぼんやりとしている学生を見つけて注意したら、「東端の山海関(さんかいかん)から西端の嘉峪関(かよくかん)まで歩いたら何日かかるだろうかと考えていた」と言われ、それ以上注意できなくなった。

 そんな空想はさておき、想像力は発想力につながる。小さなポイントから大きな成果を生み出すきっかけをつくる。目の前の課題にただ向き合うのではなく、思考を巡らすことでその効果を何倍にも広げることができる。

 建設現場など危険を伴う作業では、想像力の欠如は命取りとなりかねないが、日常生活の中でも同じではないだろうか。ある学生にリポートの進捗具合を確認すると、まだ書き始めていないが、締切まで3日あるから大丈夫との返事。締切間際になってやっと仕事に手を付けるのは学生だけではないだろうが、その残り3日間に風邪をひいて寝込んだり、急な用事が入ったら…という想像はしないのだろうか。

 時に想像力が働き過ぎて、足がすくみ、身動きがとれなくなることもあるが、今目の前にある課題が、今後の自分にどのような糧、あるいは成果となって還ってくるか、少し大きな空想も交えつつ、楽しい想像を巡らせてみよう。(S・K)