えび茶ゾーン

2013年12月16日

第907回

 10年ほど前に廊下のコンクリートに現れたひび割れ模様の美しさに足を止められた。それまで20 年の歳月をかけて成長した、あるいは成長しつつあったひび割れ模様のとりこになった。早速、陶器の粘土を使ってひび割れの観察を始めた。土木や建築といったひび割れに詳しいと思われる人たちにも、アドバイスを求めた。しかし、ひび割れ防止の研究はあるが、ひび割れの成長のメカニズムや予測の研究は聞いたことがないと言われた。

 その後、川の流れの形や樹の形、粘菌の成長模様などへと興味が広がった。これらの幾何学模様に共通する特徴や生成原理を探ることによって、模様のシミュレーションができないかと考えた。振り返ってみれば、関心は「つながり」がキーワードになっていた。だとすれば、人のつながりにも、ひび割れや川の流れと何か共通点があるのではないかと、想像はとどまることがなかった。

 最近新聞の広告で、『流れとかたち』という本の題名が目に入った。興味の網に偶然引っ掛かったのだが、この本は面白い。「すべては、よりよく流れるかたちに変化する」という「コンストラクタル法則」によって、河川の形、血管系の形、道路網の形を予測できるという。つまりコンストラクタル理論は、生物、無生物を越えて、自然に現れるかたちを予測する。

 コンストラクタル理論の渋滞学への応用も考えられるのではないだろうか。人のつながりもこの法則で説明されてしまうのだろうか。ひび割れに始まった興味はつながりを持って尽きることがない。 (IH)