えび茶ゾーン

2014年1月20日

第909回

 今年も就活の季節になった。早稲田大学出身の朝井リョウ氏が男性最年少で直木賞を受賞した『何者』(新潮社)は、大学生の就活を軸に、若者たちのコミュニケーションの複雑な様相を描いている。そこに描写された若者のリアルな内面と人間関係の不安定さに共感を覚える人も多いのではないだろうか。

 人のことが気になるというのは、自分のことを知りたいということの裏返しでもある。本当の自分はこんなものではないはずだと思いたいこともある。私も大学生くらいのころは消極的な自分の性格が好きになれなかった。サークルでもリーダーシップを取る、などとは程遠く、自分の存在の希薄さが嫌いであった。気が付くと損な役回りをしていることも多かった。

 20歳にもなればだいたいその人のパーソナリティは固まる。自分の性格が嫌いだといっても一生付き合わないといけない。だけど自分のパーソナリティを本当に自分は知っているだろうか。

 他人が見ている自分の顔は決して自分で見ることができない。自分の声は決して他人が聞くようには聞こえない。自分が思っている自分は他人が見ている自分とは決して同じではない。

 私が自分の嫌いであった性格を受け入れられるようになったのは40歳を過ぎてからだろうか。年齢とともにさまざまな人と交わり、人からの反応の中に自分を見つけたのである。人の反応の中に自分らしさが出ていたと思ったのである。

 結局自分を知るには、人との交わりの中で人からのフィードバックをよく見るとよい。そこに自分が映っている。 (T)